「CDは何枚買ったの?」「いくら積んだら当選する?」
K-POPのファンダム(ファンコミュニティ)に入ると、こうした質問がタブー視される雰囲気に戸惑うことがあるかもしれません。
日本のコンサートマナーとは別に、K-POPにはファン同士の交流やSNS上での振る舞いに関して、独自の「暗黙のルール」が存在します。これは単なる意地悪や排他性ではなく、実はファンダム全体の秩序を守り、アーティストを傷つけないために自然発生的に生まれた「知恵」でもあります。
この記事では、K-POP特有の文化である「ボーダー」の秘密(日韓の違い)や、SNSでの「検索避け」の理由、転じて新規ファンが古参ファンと上手く付き合うコツなど、人間関係とお金にまつわるディープなルールについてお話ししていきます。
- 「CD何枚買った?」が敬遠されがちな背景にある事情
- SNSでグループ名を伏せ字にする「検索避け」に込められた配慮
- 新規ファンがやりがちな失敗を避け、周囲と心地よく過ごすヒント
- チケット代行やサセンなど、大切な推し活を守るために避けたいリスク
この記事ではSNSや言葉のマナーを中心に解説していますが、現場交流や自衛、用語の解説も別記事で詳しくまとめています。
・Vol.2|現場交流・ソンムル・お祝い文化編はこちら
・Vol.3|鉄の掟・出禁を避けるための自衛策はこちら
・【番外編】K-POPファンダム用語集 A to Z はこちら
お金と人間関係におけるK-POPファンの暗黙のルール
K-POPの推し活は、楽しい反面、シビアな競争社会の側面も持っています。特にお金が絡む話題やファン歴による上下関係はトラブルの元になりやすいため、まずはここから押さえておきましょう。
サイン会ボーダーや積んだ枚数はタブーな話題

「一体何枚買えば会えるの…?」その答えは、誰も教えてくれないトップシークレットです。[Image by AI]
K-POPには「ペンサ(サイン会)」や「ヨントン(ビデオ通話)」という接触イベントがありますが、これに当選するための当選ラインを「ボーダー」と呼びます。
「何枚買えば当たるか教えてほしい!」と思うのは当然ですが、「ボーダーを聞く・教える」行為は最大のタブーとされています。
【日韓でのシステムの大きな違い】
🇰🇷 韓国(本国):基本的に「購入枚数順」で当選が決まることが多いため、明確なボーダーが存在します。「○枚買えば確実」という情報は資産価値が高いため、簡単には教えません。
🇯🇵 日本:法律上、完全な「抽選(ランダム)」とされています。1枚で当たる人もいれば、100枚で落ちる人もいます。しかし「実際は沢山買った方が当たりやすいのでは?」という噂も絶えないため、枚数の話は嫉妬やトラブルを避けるためにしないのがマナーです。
また、大量に購入することは「札束の殴り合い」という生々しい現実でもあります。夢のある推し活の世界で、具体的な金額や枚数を公言することは「野暮」とされるため、聞かれても「運が良かっただけ」と濁すのがスマートなマナーです。
枚数や金額と同様に、トレカ交換の際などにメンバーを価値で測るような「レート」という言葉も、ファンダムでは禁句とされることが多いようです。 こうした専門用語の詳しい解説は、K-POPファンダム用語集もあわせてご覧ください。
新規と古参のトラブルを回避するファンのマナー
どの界隈にも「古参(昔からのファン)」と「新規」の壁は存在しますが、K-POPでは特に「苦難の時代を共有したか」が重視される傾向があります。
デビュー当時の売れなかった時期や、メンバー脱退などの辛い時期を支えてきた古参ファンにとって、今の輝かしい姿しか知らない新規ファンの「昔のビジュアルは微妙だったよね」といった何気ない一言は、地雷を踏む行為になりかねません。
逆に、古参ファンがマウントを取ってくる場合もありますが、最近は「いつファンになったかより、今どれだけ愛しているか(All-Fan)」という考え方も広まっています。新規の方は過去の歴史にリスペクトを持ち、古参の方は新規を温かく迎える。この謙虚な姿勢がお互いを助けてくれるのではないでしょうか。
掛け持ちや雑食ファンの交流での立ち振る舞い
複数のグループを応援する「掛け持ち(雑食)」は、K-POPでは珍しいことではありません。しかし、特定のグループしか愛さない「単推し」の方の中には、掛け持ちを快く思わない方もいらっしゃいます。
特に注意したいのが、「Aグループの方がここが優れている」といった比較発言です。悪気がなくても、比較された側のファンは傷ついてしまうものです。交流の場では、その場における「最推し」の話に集中し、他のグループの話は相手が興味を示さない限り控えるのが、安心できる「暗黙のルール」と言えそうです。
ケミ名や隠語を使いこなすための基礎知識

メンバー同士の仲良しコンビには、必ずと言っていいほど「ケミ名」がついています。[Image by AI]
ファン同士の会話では、メンバー同士の相性の良さを表す「ケミ(Chemistry)」という言葉が頻出します。TWICEの「ミサモ」のような頭文字を繋げたものや、生まれ年による「97z(クチルズ)」など、様々な呼び方があります。
こうした専門用語(隠語)を正しく使えることは、コミュニティの一員である一つの証明のようにも感じられます。公式コンテンツを見たり、先輩ファンの会話を参考にしたりして、少しずつ覚えていくと会話がより弾むようになるかもしれませんね。
チケット代行トラブルと金銭取引のリスク
韓国での公演に行きたい場合、現地の電話番号認証が必要なため、日本からは自力でチケットが取れないことが多々あります。そこで「代行業者」を利用することになりますが、ここには注意すべき落とし穴があります。
SNSなどの個人取引では、残念ながら詐籍被害も後を絶ちません。また、韓国の公演は「本人確認(実名制)」が非常に厳しく、正規ルート以外で入手したチケットでは入場できないリスクも高まっています。「お金を払えばなんとかなる」という考えは、海外公演では通用しないと肝に銘じておきたいところです。
「自己責任」という言葉の本当の意味や、代行利用時の心得については、Vol.3の「チケット転売・代行利用」でさらに深く解説しています。
SNSで気をつけたいK-POP独自の暗黙のルールとマナー

自由につぶやけるSNSですが、そこには「推しを守る」ための見えない配慮が張り巡らされています。[Image by AI]
K-POPファンにとってSNSは必須ツールですが、ここにも独特な「検索避け」や「棲み分け」の文化があります。知らずに投稿すると「マナー違反」と受け取られてしまうこともあるため、少し注意を払いたいポイントです。
グループ名を伏せ字にして検索避けをする理由
SNSを見ていると、グループ名やメンバー名を絵文字に変えたり、あえて少し違う表記にしたりしている投稿を見かけませんか? これを「検索避け」と言います。
主な理由は、「ネガティブな話題や、ファン内だけで通じる濃い話を、本人に見せないため」です。これを「エゴサ(エゴサーチ)避け」とも呼びます。
アーティスト本人が自分の名前を検索した時に、批判的な意見や、ファンの行き過ぎた妄想などが目に触れないように配慮する、ファンなりの「優しさの壁」なのですね。
ナマモノやCP投稿は鍵垢で行うのが鉄則
メンバー同士の関係性を想像する話題や、デリケートな二次創作は「ナマモノ(nmmn)」と呼ばれることがあります。これらは実在の人物を題材にしているため、非常に配慮が必要なジャンルです。
こうした話題を不快に思うファンもいますし、何より本人たちの目に触れることは避けたいマナーです。もし自分がそういった話題を発信したい場合は、必ず「鍵アカウント(非公開)」にして、一般のファンの目に触れないようにするのが賢明な「ルール」とされています。
公式アカウントへのリプライで避けるべき内容
アーティストの公式投稿へのリプライ(返信)欄は、本人が直接目にする「公的な場所」です。ここに、ファン同士でしか通じない隠語や、運営への不満などを書き込むのは避けたいものです。
リプライ欄は、推しに届ける「応援の手紙」のような場所。純粋な称賛の言葉で埋め尽くして、推しが気持ちよく読める環境を作るお手伝いをしたいですね。
空港出待ちやサセン行為について
空港でファンにもみくちゃにされているアイドルの姿を見ることがありますが、空港での出待ち行為は基本的にルール違反です。メディアが撮影した公式の写真を楽しむのは問題ありませんが、一般のファンが空港に押し寄せるのは、一般客の迷惑になるだけでなく事故につながる危険もあります。
サセン行為や出待ちなどの「鉄の掟」を破った場合に課されるペナルティについては、Vol.3の「鉄の掟」セクションで詳しく触れています。知らずに一線を越えないために、ぜひ一読をおすすめします。
コンサートのネタバレをSNSでする際の配慮
ツアー期間中、SNSでのネタバレには細心の注意を払いたいですね。ここで大切なのは「演出のサプライズを奪わないこと」や「無断での撮影・投稿をしないこと」です。
自分の推しているグループの「界隈の雰囲気」をよく観察して、周りに合わせるのが一番安心な方法かもしれませんね。
【コラム】日本は「守る」、韓国は「広める」?応援文化の違い
ここまで「検索避け」の重要性をお伝えしましたが、実はこれは日本独自の文化(ローカルルール)である側面が強いです。韓国や海外のファンは、逆にハッシュタグを多用して推しの名前を世界に広めることを最優先することもあります。
- 日本のスタンス:「推しに迷惑をかけないよう、ネガティブなものや妄想は隠す」
- 海外のスタンス:「推しを有名にするため、とにかく露出を増やす」
日本語で発信する時は日本のマナー(検索避け)を、海外のタグイベントに参加する時は思い切り拡散するなど、その場に合わせた使い分けを楽しめるのが上級者のテクニックかもしれません。
K-POPの暗黙のルールを味方に、楽しく推し活を
今回は、人間関係やSNSにまつわるK-POPの「暗黙のルール」について解説しました。少し窮屈に感じるかもしれませんが、これらは全て「推しを大切にし、ファン同士も快適に過ごす」ために先人たちが築いてきた知恵でもあります。
最初から全て完璧にこなす必要はありません。「こうしたら皆が楽しいかな?」と少し立ち止まって考える優しさがあれば、きっと素敵なK-POPライフが送れるはずです。
SNSのマナーの次は、ライブ会場での交流や、自分を守るためのさらに深いルールも学んでみませんか?

